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- 2025/10/18
- 理研一般公開2025にて、ポスター展示とその説明をしました。 展示場所は仁科センターRIBF地下2階で、タイトルは「J-PARCでの奇妙な原子核探索」でした。 理研全体の来場者は約7,000人、そのうち3,000人がRIBFへ来てくれました。 とても大盛況な一般公開でした。
- 2025/10/17
- Googleのオフィス(東京)の見学をしてきました。
Welcome
東北大学 大学院 理学研究科 博士後期課程1年です。 また、現在は理化学研究所 仁科加速器科学研究センターのJRAというプログラムも兼務しています。 物理学の中でも素粒子·原子核実験を専攻しています。 さらにその中でも「K中間子原子核」という奇妙な形態の原子核について、加速器ビームを使って実験的に調査しています。
研究紹介 〜原子核に「仲間外れ」を入れる〜
物理専攻ではない人でもわかるように、なるべく一から順に説明をしてみます。
(1) 物質の階層構造について
我々が住む宇宙は「何」でできているのでしょうか。図1を見てみてください。 現在の宇宙は、4.6%が我々の馴染みのある「原子」で、24%は「ダークマター」、 その他71.4%は「ダークエネルギー」と呼んでいるもので構成されているようです。 ダークマターは、宇宙が原子だけでできていると仮定した時、 どうも銀河の自転速度などの計算値と天文観測値が一致しないことからその存在が予言されました。 ダークエネルギーは、宇宙の膨張を説明するために必要な要素です。 「ダーク」と言っている理由は、重力相互作用はするが光を放出も反射もしないからです。 ダークな2つの決定的な直接の観測事実は未だ無いはずです。 「無きゃおかしい!無きゃ説明がつかん!」といった類のものだと思います。
Credit: NASA/WMAP Science Team
出典: NASAのページhttps://map.gsfc.nasa.gov/news/
ダークな2つはひとまずは本ページでは忘れてください。ここからは原子に注目します。 さて、原子は「何」でできているのでしょうか。図2を見てみてください。 原子(atom)は原子核(nucleus)と電子(electron, e-)でできています。 原子核の周りを電子雲(存在確率)が回っています。 では原子核はどうかというと、陽子(proton)と中性子(neutron)の集合体です。 例えば、中学校で習う周期表の初め、「水素」の原子核は陽子1個。「ヘリウム」の原子核は陽子2個と中性子2個。 「鉄」の原子核は陽子20個と中性子約30個が集まってできています。 また、陽子(中性子)1個の質量はなんと電子1個の質量の約2000倍あります。 何が言いたいかというと、宇宙の4.6%は「原子」というよりも「原子核」であるということです。 それでは陽子/中性子は「何」でできているのでしょう。 現代物理学(実験/理論)は、陽子/中性子は「クォーク(quark)」3つでできていると言っています。 クォークや電子は現代物理学ではそれ以上細かくできない「素粒子」だと考えられています。
縮尺は正確ではありません。
参考
ではクォークは何でできているのだという質問には答えることは難しいです。 これは「クォークの閉じ込め」という現象のためです。 この「閉じ込め」のせいで、クォークを陽子/中性子から引っこ抜いて調べることができないので、 人類は今のところ誰も単体クォークの直接検出をできていません。 一般に、ある「物体」が自身より小さな構成物から成り立っていることを、我々はどうすれば証明できるでしょうか? 僕が最も直観的で分かりやすいと思う証明方法は、その「物体を壊して中身を出す」です。 クォークはそもそもそれ自身を取り出すことができていないので「壊してみる」という方法は使えません。 もう一つの手段としては、「叩いてやってその物体の内部状態が変化するかどうか」を調べてやることです。 「内部状態」の変化の説明はここでは端折ります。 が、これも結局クォーク単体に対して必要な操作なので、やはりクォークより下の階層の存在の有無を実証するのはまだ難しそうです。
閑話休題
ここまでで、宇宙は4.6%の「原子核」(以降、この4.6%のことを「物質」ということにします)と目に見えない「ダーク」なもの(24%+71.4%=)95.4%でできていて、 原子核は陽子/中性子から、陽子/中性子はクォーク3個でできている、というところまで説明しました。
(2) 6個のクォークとハドロンの分類
クォークについて少し詳しく見てみましょう。図3のように、現代物理学ではクォークは6種類あると考えられています。 (クォーク以外の素粒子について興味を持たれた方は「標準模型」と検索してみてください。) この6種のクォークは世代と電荷で分類できます。電荷は電子(e-)の-1を基準にしています。 また、それらは質量も異なっており、最も軽い「アップクォーク」と最も重い「トップクォーク」ではなんと約10万倍も差があります。
では、ここからは少し言葉の定義をしていきます。以下の3つを覚えておいてください。
- ハドロン :クォーク(反クォーク)が複数集まってできた粒子。ハドロンは大きく以下2つの仲間に分けられる。
- 重粒子(バリオン) :クォーク3個が集まってできた粒子(反クォーク3個でも良い)。
- 例) 陽子: uud、中性子: udd、ラムダ粒子: uds、などなど
- 中間子(メソン) :クォーク1個と反クォーク1個でできた粒子。
- 例) パイ中間子(π-): ūd、K中間子(K-): ūs、などなど
さてここまでで、素粒子であるクォークからできる粒子は2種類(バリオンとメソン)あり、 原子核を構成する陽子や中性子はバリオンに分類される、というところまで来ました。 結局、この宇宙の 「物質」はどういうわけかクォーク-反クォーク対の「メソン」ではなく、クォーク3個の集合体「バリオン」で構成されているということになります (ここが一番重要)。そうです。メソンは物質の構成を任されていない「仲間外れ粒子」なのです。
(3) 中間子原子核 〜原子核に仲間外れ「メソン」を埋め込む〜
いよいよ本題に入ります。(編集中)
(4) 実験方法
(編集中)
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