|
多重 γ 線検出器群 FOREST
|
FOREST
多重ガンマ線検出器群 FOREST は
Four-pi Omnidirectional-Response Extended
Spectrometer Trio
の略であり、複数の γ 線を検出するシステムとなっています。
入射 γ 線ビームを標的物質に照射すると中性パイ中間子、エータ中間子
などが生成されますが、これらはすぐさま二つの γ 線に崩壊します。
これらの中性中間子は崩壊して発生する二つのガンマ線の不変質量分布で
識別します。ほぼ全立体角を覆っているため複数の中性中間子が生成された
ときでも間違った二つのガンマ線の組み合わせでできるバックグラウンドを
小さくすることができます。
FOREST は純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 192本、鉛の中に
シンチレーティングファイバーを埋め込んだ鉛シンチレーティングファイバー
252本、鉛ガラスチェレンコフ検出器 36 本
のガンマ線検出器群で構成されます。
さらにそれぞれのガンマ線検出器群の前には電荷をもった粒子を識別するため
に薄いプラスチックシンチレータ群を配置します。
SCISSORS III は Sendai CsI Scintillation
Systems On Radiation Search の略で
正六角錐台形の純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 192本から構成されます。
前方の極角 4°から24°の領域を覆います。
SCISSORS II
に使われていた CsI 結晶を組み替えて作成しました。
中間子が崩壊して発生した γ 線は CsI 結晶に入ると
電磁シャワーを起こします。電磁シャワーでは主に
- γ 線が電子・陽電子対の対生成を起こす
- 電子あるいは陽電子が制動放射を起こしγ線を発生する
という反応が連続的に起こります。このうち電子・陽電子は CsI の中で
光を発生し、CsI 結晶に取り付けられた光電子増倍管で電気信号に変換します。
電気信号の大きさは CsI 結晶に入射したγ線のエネルギーに比例
しています。CsI 結晶の前面には薄いプラスチックシンチレータ群
Spiral Flare (仮称) を
取り付け、電荷を持った粒子かどうかを判別するようにします。
このプラスチックシンチレータは薄いので γ 線は電子・陽電子対
の対生成を起こさず、電荷を持っていないのでこのプラスチック
シンチレータでは光を発生しません。
図 (SCISSORS III) の説明
SCISSORS III は正六角錐台形の純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 192 本
から構成されています。
各 CsI 結晶の背面には光電子増倍管が取り付けられています。
内側の CsI 結晶は長さ 30 cm であり、一番外側の結晶の長さは 25 cm
と違った形状をしています。
前面には薄いプラスチックシンチレータ群 Spiral Flare (仮称) が取り付けられ
通過した粒子が電荷をもっているかどうかを判別できるようにします。
Spiral Flare (仮称)
Spiral Flare は薄いプラスチックシンチレータ群で構成されており、
前方 γ 線検出器群 SCISSORS III の前面に配置されます。
プラスチックシンチレータは電荷をもった粒子が貫通すると
シンチレーション光を発生しますが、ガンマ線は何も起こらず
そのまま通り抜けます。これにより
電荷をもった粒子であるかどうかを識別することができます。
右巻きの螺旋状のものと左巻きの螺旋状のものを重ねることにより
電荷をもった粒子が貫通した場所まで特定できるようにします。
図 (Spiral Flare) の説明
Spiral Flare は薄いプラスチックシンチレータ群で構成されており、
電荷をもった粒子であるかどうかを識別します。
右巻きの螺旋状のものと左巻きの螺旋状のものを重ねることにより
電荷をもった粒子が貫通した場所を特定することができます。
三層目の扇形状のものは二層とも隙間を貫通して
電荷をもった粒子が通ったのに、電荷をもっていないと判断されないように
するための予備となっています。
LEPS Backward Gamma は
極角30°から100°の領域を覆い、
鉛シンチレーティングファイバー 252 本で構成されています。
かつて
大型放射光施設 SPring-8 の
レーザー電子光施設 LEPS
で使用されていました。
鉛シンチレーティングファイバーは鉛の中に直径 1 mm の
シンチレーティングファイバーをたくさん埋め込んだものとなっています。
中間子が崩壊して発生した γ 線が鉛シンチレーティングファイバーに入ると、
鉛で電磁シャワーがおこり、
電子あるいは陽電子がシンチレーティングファイバーの中で
光を発生します。
鉛シンチレーティングファイバーでも
後面に取り付けられた光電子
増倍管で電気信号に変換します。
電気信号の大きさは
入射した γ 線のエネルギーに比例しますが
シンチレーティングファイバーの中でしか光は
発生しないので
CsI 結晶ほどエネルギーの分解能はよくありません。
図 (LEPS Backward Gamma) の説明
LEPS Backward Gamma は極角30°から100°の領域を覆い、
鉛シンチレーティングファイバー 252 本で構成されています。
極角方向は10°ごと7輪に分けられており、
各輪は方位角にして10°ごと 36 本に分けられています。
前面には薄いプラスチックシンチレータ群が取り付けられ、
通過した粒子が電荷をもっているかどうかを判別できるようにします。
Rafflesia II
後方 γ 線検出器群 Rafflesia II は
鉛ガラスチェレンコフ検出器 36 本で構成されます。
電荷を持った粒子が物質中で
光速を超えた速度をもつとき、チェレンコフ光と呼ばれる光を発生します。
物質中の光速は屈折率 n、真空中での光速 c
を用いて c/n であらわされます。
鉛ガラスチェレンコフ検出器の屈折率は約 1.6 であり、電磁シャワー
の電子や陽電子はチェレンコフ光を発生します。
鉛ガラスチェレンコフ検出器でも
後面に取り付けられた光電子増倍管で電気信号に変換します。
電気信号の大きさは入射した γ 線のエネルギーに比例します。
図 (Rafflesia II) の説明
後方 γ 線検出器群 Rafflesia II は
鉛ガラスチェレンコフ検出器 36 本で構成されます。
中心は入射 γ 線ビームを通すために穴があけられています。
[東北大核理研のページ]
[研究部門紹介のページ
]