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GeV γ ビームライン
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STB リング
STB リングはストレッチャー・ブースタリングとよばれる
円形加速器であり、線形加速器 (LINAC) から入射されたパルス電子線を
連続ビームに変換したり (ストレッチャー機能)、
最大 1.2 GeV までビームを加速して周回させる (ブースター機能)
ことができます。 GeV γ ビームラインは STB リングをブースター機能で
使っています。
- 電子線を線形加速器で 150 MeV ないし 200 MeV に加速する
- 加速した電子線を STB リングに入射する
- STB リングで 920 MeV ないし 1.2 GeV に加速する
- STB リングで電子を周回させる
- 周回電子をラジエータにあてて高エネルギー γ 線を発生させる
という手順をだいたい10秒から30秒サイクルで行っています。
このサイクル中に高エネルギー γ 線が発生されている時間の割合は
50-70%程度です。
図 (STB リング) の説明
線形加速器で 150 MeV ないし 200 MeV に加速された電子線を STB リングに入射し、
STB リングで 920 MeV ないし 1.2 GeV に加速し蓄積周回させています。
周回電子をラジエータにあてて高エネルギー γ 線を発生させ GeV γ
照射室に導いています。
STB-Tagger II
STB リングを周回する電子のいくつかはラジエータと呼ばれる直径 11 μm の
炭素ファイバーで制動放射を起こします。その結果、高エネルギー γ 線
(GeV γ) がもともと電子が走っていた方向に飛んでいきます。
制動放射を起こした電子はもともと STB リングを周回している電子にくらべて
運動量が小さいので STB リングを構成する偏向電磁石でより大きく曲げられます。
この電子の軌道を測定することで発生した GeV γ のエネルギーがわかる
わけです。
図 (STB-Tagger II) の説明
偏向電磁石のリターン ヨークとコイルの隙間に電子の軌道を測定するための
232本のシンチレーティング ファイバーが使われています。
シンチレーティング ファイバーは電子が通過すると光を発生し、
光電子増倍管で電気信号に変換します。
偏向電磁石のリターン ヨークとコイルの隙間には磁場がかかっており、普通
光電子増倍管は動作しませんが、鉄のフェンスを挿入して磁場
を抑えることで動作させています。
SCISSORS II
SCISSORS II は Sendai CsI Scintillation
Systems On Radiation Search の略で
正六角錘台形の純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 206 本で
構成されています。
ラジエータからのγ線はGeV γ照射室の標的に照射され、
中性パイ中間子、エータ中間子などが生成されます。これらの中間子は
すぐさま二つのγ線に崩壊します。
中間子が崩壊して発生したγ線は CsI 結晶に入ると電磁シャワーを起こします。
電磁シャワーでは主に
- γ 線が電子・陽電子対の対生成を起こす
- 電子あるいは陽電子が制動放射を起こしγ線を発生する
という反応が連続的に起こります。このうち電子・陽電子は CsI の中で
光を発生し、CsI 結晶に取り付けられた光電子増倍管で電気信号に変換します。
電気信号の大きさは CsI 結晶に入射したγ線のエネルギーに比例
しています。CsI 結晶の前面には薄いプラスチックシンチレータが
取り付けられており、電荷を持った粒子かどうかを判別します。
このプラスチックシンチレータは薄いのでγ線は電子・陽電子対
の対生成を起こさず、電荷を持っていないのでこのプラスチック
シンチレータでは光を発生しません。
図 (SCISSORS II) の説明
SCISSORS II 検出器群は正六角錘台形の純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 206 本
から構成されています。
各 CsI 結晶の背面には光電子増倍管が取り付けられています。
図では通過した粒子に電荷があるかどうかを
判別するための CsI 結晶前面の薄いプラスチックシンチレータは
省略されています。
GeVγ照射室の最上流には RTAGX 双極電磁石が設置されています。
RTAGX は旧東京大学原子核研究所で TAGX スペクトロメータ、
本施設のNKS スペクトロメータ
として使われてきた双極電磁石を改造して用いています。
中心磁場は最大 1.2 T であり、
ガンマ線を使った実験ではガンマ線ビームに混入されてしまう電子・陽電子を
除去するために用いられています。
電子・陽電子ビームを使って検出器のテストを行うときには
RTAGX 双極電磁石の上流に金属箔を置きガンマ線で電子・陽電子対生成を
起こさせ、30度に運動量分析したものをビームとして用います。
ビームのエネルギーは RTAGX のコイル電流をかえることによって調整し、
最大 850 MeV がえられます。
ビーム強度はほとんどのエネルギーで最大 3 kHz であり、
エネルギー分解能は 1% 弱となっています。
図 (検出器テスト用電子・陽電子ビームライン) の説明
対生成された電子または陽電子が30度ライン
に運動量分析され、鉛のコリメータで絞られています。
次期計画として建設中
大立体角ガンマ線検出器群 FOREST
生成した中性パイ中間子やエータ中間子は崩壊して発生される二つのγ線の
不変質量分布で識別されます。SCISSORS II の立体角は全立体角の約12.6%
しか覆っていないので。その他の反応(たとえば中性中間子を二つ生成)で
発生したγ線の間違った組合せによって
できた不変質量のバックグラウンドが大きく存在します。
できるだけこのバックグラウンドを減らすため立体角を大きくした検出器群として
FOREST の建設を計画しています。
FOREST は
Four-pi
Omnidirectional-Response
Extended Spectrometer Trio
の略となっています。
純ヨウ化セシウム (CsI) 結晶 192本、鉛の中にシンチレーティングファイバーを
埋め込んだ鉛シンチレーティングファイバー256本、
鉛ガラスチェレンコフ検出器 36 本で構成されます。
図 (FOREST) の説明
前方検出器群は極角30度までを覆い、SCISSORS II を組み替えた
CsI 結晶による SCISSORS III、
極角30度から100度までは
鉛シンチレータレーティングファイバー252本で構成される
LEPS Backward Gamma、
後方は鉛ガラスチェレンコフ検出器群 Rafflesia II と
なっています。
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